木曜日, 4月 18, 2019

2019年6冊目(334)

字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論 Kindle版
日本映像翻訳アカデミー  (著)
日本映像翻訳アカデミー; 1版 (2018/9/24)

映画・ボヘミアンラプソディーを日本で観た時に感じたこと。「字幕がとても効果的やなー!」その字幕のおかげで聞き取りにくかった部分の英語も拾えて内容の理解がとても深まりました。第二言語を扱う人にとって字幕によって語学学習の効率化を意識した瞬間でもありました。

では、その字幕はどうやって作られているのか?僕自身が英語を日本語に翻訳するという作業にも興味があったので、この本を読んでみようと思った次第で。しかもキンドルの読み放題のおかげで見つける事が出来た。やっぱり、本を読むのはタイミングだなとつくづく。

本のタイトルにある通り「1枚の字幕に込められた技能と理論」を体感した。これもタイミングで読書と並行して友人のお手伝いで翻訳作業を実際に手伝ったことがこの読書に当事者性と裏付けを与え、読書と経験の相互作用を意識したのでした。

単に訳せばよいではなく「理解が出来るように訳す」の背後にある膨大な思考の作業は、言われてみれば「そらそうちゃうとなる」が言うは易しやるは本当に難しだった。中学生の時、「have/get/take」などの訳をみてどんだけ訳があるねん!オロ○インやメンソ○ータムの効用みたいに万能か!と思って、意味が解せなかった記憶がある。ところが「語が持つそもそも意味」を留学し使い・聞き・感じる立場になってなぜあんなに対応訳が多かったのよく分かり、日常生活で利便性を感じられるようになった。

日本語には主語が省略される文化だったり、日本語版のhave的な表現(siblingは兄弟姉妹のどれなのかなど)を考えると両方の言語の文化・習慣・伝統といった背景を理解しないと、短い言葉に落とし込むのは大変だと思う。僕が携わった文章翻訳の方がまだ「字数の制限」が緩やかだと思うので、字幕となると表現のハードルたるや。。。

その際に思い出したのは、友人が取材を受けその模様を録画し1つの動画としてする作業の際に自己紹介の時でも撮影側が用意した台本に則ってしゃべったと言っていたのを思い出した。言葉を嚙むかまないがあるのでカンペは必要かもしれないけど、内容ぐらい自分で考えさせればと思った僕の浅はかさに気付いたのでした。この動画にはサブタイトル・字幕が入るので、それを踏まえて訳者に対しての配慮または動画作成の迅速さを考えるとこの「台本」はとても理にかなっていたのだと。

こういったテクニカルな部分に加え、昨今話題のファクトチェックを入れるとなると翻訳者と言うのは野球でいう「走攻守」を備えないと出来ない仕事なのである。読み手・聞き手に対しての作業でその層がどのような人達なのかによって選ぶ言葉も変わってくるわけで、その要求されるレベルたるや。。。同じ台本でも演じる人よって変わるような演劇や古典落語のような側面もあるのかもしれない。

その他に字幕の縦表記・横表記に関して眼球運動で使う筋肉やら有効視野など生物学的な側面や、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学でのスピーチで言及したような文字のフォントの話に使用される文字の色など。さらにAIが生成する字幕に関して言及してあったり。されど翻訳、なるほど翻訳である。たかが翻訳だなんて言おうものなら。。。

自分の海外生活の経験を踏まえて「翻訳」とか一つの仕事のオプションなどと考えた自分が恥ずかしい。実際に手を動かす機会を与えてくれた友人に心から感謝である。貰った課題は何とかやり遂げたけど、思ってた以上の時間を要した。。。当たり前じゃ!!!でも当初の目論見は。。。あー、サブすぎる。。。

日本で映画を観て感じてから約3カ月ぐらいだろうか。とても身になった体験だった。うまく全てが噛み合ったこの期間に感謝! まるで翻訳された新しい自分。。。癖がすごくなった!