日曜日, 11月 12, 2023

2023年 13-4 冊目 (382-3)

偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか Kindle版
マリオ リヴィオ (著), 千葉 敏生 (翻訳)
早川書房 (2015/1/25)

宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言 (文春e-book) Kindle版
稲泉 連 (著)
文藝春秋 (2019/11/13)

道への遭遇ではないですが、万人の想像を超える発見や経験とは何なのか?

「偉大なる失敗」では今では教科書に載っている科学的事象がどのように発見され、現在に至る過程ででその発見にまつわる失敗があったのか - 実際には失敗と言うより議論・意見の相違・こだわりと言った部類で人生を失うような失敗ではなく科学における必要な回り道・余談的な興味深い話、それを偉大なる失敗と素敵な表現した本です。

大学生・院生(高校生もいけるかな)が中途半端な勉強をするよりこの本をしっかり読み込む方が科学的思考を学ぶ上で有益じゃないかなと思うぐらい、僕も勉強になりました。やっぱり背景やそれにまつわるエピソードは面白いですね。

それを踏まえると、一見全く違う毛色の宇宙飛行士の本。いや、僕には本質的には同じ毛色の本でした。今現在進行系で起きている宇宙という未知への挑戦。たった12人の日本人しか実際に味わったことのない宇宙という存在。それへの理解・解釈。100年後ここで書かれている話は「偉大なる失敗」の1つにカウントされるかもしれない。

人間の未知への営みを地続きなものとして繋げてくれた2冊の本でした。Kindleで読んだのですが実際の紙の本を手元に置きたいと思える出会いに感謝です。

僕の科学の営みも人に興味を抱かせる素材になれるのか。。。知らんがな!まぁ、頑張りなはれ!

日曜日, 9月 17, 2023

2023年 12 冊目 (381)

孤闘 三浦瑠麗裁判1345日 (幻冬舎単行本) Kindle版
幻冬舎 (2023/6/21)
2023/6/21

僕自身が裁判とはまだ無縁な人生なので、どういったものなのか・どのようなプロセスを経るのかに関してとても勉強になりました。

と、ここまでが言えば建前っす。以前に三浦さんの本を読んだ際「僕が持っていた三浦瑠璃さんへの「?」の大部分は解決しました」と書きました。大部分という訳で、根本的には水と油なのかなと思ったりしてました。そして、機会があるとしたらお話してみたいとも思っていました。
https://yoshi0604.blogspot.com/2020/12/2020-8-9-351-352.html

そしてこの本を読んで、もちろん裁判での戦略のために不本意にも選んだ答弁の作成なのかもしれませんがそれだとしても、改めて「きっと話が合わない人なんだろうな」と僕は思いました。

宮崎哲弥さんが始めたYouTubeにゲストで出演した際に、彼女の運営するシンクタンクや彼女が参画している(いた)政府の会議での彼女の役割を聞く機会に恵まれてなるほどなとまた「?」が解決したところだったので、すこし残念に思いました。もったいない・損するひとやなーって(誰が言うとるねんのツッコミは受け入れます)

今を生きるうえで今までの経験と環境の大事さを僕自身は最近感じていたのですが、立ち止まってまた深く考えることになりました。

そして阪神タイガースの優勝から更にその確信を深めました、若い時って大事だと。。。
以前の感想でも書きましたが今後もフォローしていきたいです。

水曜日, 8月 23, 2023

2023年 10-11 冊目 (379-80)

 三流シェフ 単行本
三國 清三 (著)
幻冬舎 (2022/12/14)

熟達論―人はいつまでも学び、成長できる― Kindle版
為末大 (著) 
新潮社 (2023/7/13)

「おこがましいけど同じ匂いのする方だなー」三流シェフ読書中の僕の感想です。
数年前のテレビドラマ・グランメゾン東京。好きである一定期間を経るとまた観たくなり何度も観ています。読書中のもう一つの感想、三國さんがこのドラマのモデルじゃないと僕には思えてなりませんでした。

野球漫画ドカベンは神奈川県予選や甲子園での試合に注目が行きがちですが、僕には話の初期の方が印象に残っています。中学卒業後に就職する予定だった山田太郎が高校に進む。ここの時代背景がすっぽり抜け落ちている。これが高校卒業後の就職になり、今では大学に行くのが当たり前になっている。ほんの数十年前で描写される環境が全く違う。この違いは都市部と地方という切り口を入れると更に深くなる。

三國さんの出身地・北海道増毛。そして進学に関する時代背景。この2つがこのドラマのような人生の背景にあることは抜け落ちてはいけないなと。そう、あの時代・あの環境であの人間性をもった三國さんだから。そこに人との出会いがあり。本人の負けん気や才覚などなどが化学反応を起こしたのです。自己研鑽は現代に通じますが、早い時期から現場で働きながら腕を磨くという現実を今の時代にどのように当てはめるか。この点が読みながら考えました。

そういった点で、為末さんの熟達論はこの自己研鑽の部分においての具体的な方法論になるのかなって。この順序で手に取れた奇跡に感謝したいです。
自分自身のスキルアップの手助けにもなりますが、実は教える側の意識という面でこの本はもっと本領を発揮するのではと感じてます。
僕が現在含めお世話になっている指導者側の方々はなんとも上手に僕を導いてくださっているように思います。たまたまなのか意図的なのかは本人に確認しないとわかりませんが、確実に言えるのはマッチングの妙は重要だと思います。

三國さんの本でも出てきますが、上の立場の人が下の人の芽を摘むことなく枯らさず腐敗させずに大きくすることは簡単ではないはずです。それをできるボスとそれに答える当事者。
2つの本を読みながら理想のチームを構築したい僕の夢は叶うのか。。。???まだまだ修業が必要です。

そして最後に、熟達論はまるで仏教の話のように僕には感じてとても深く追求すべき問だなーって。是非機会があったら為末さんとお話してみたいです。
もちろん三國さんとも、いやまずは三國さんのフレンチを体感してみたい。ビールを控えて金ためな、といいつつ頼むこの一杯。だめだこりゃ!


火曜日, 7月 25, 2023

2023年 9 冊目 (378)

のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか 単行本
フランク・ローズ (著), 島内哲朗 (翻訳)
フィルムアート社 (2012/12/25)

この本出版から10年たった今読んでも十分に刺激的な本でした。
主にアメリカが舞台となって書かれていますが日本では日本特有の状況をもって似たストーリーが存在していたかもしれません(ある意味で日本特有なものがあったり)。

この本をみて改めてバットマンシリーズを見返し、新たなバットマンシリーズ第一作のエンディングを観てゾクゾクしました。10年後の今だからある程度の知識や経験を持って読めてる(理解できてる)部分が僕にはあると思います。というのもアマゾンの履歴によると僕がこの本を購入したのは2016/12/15だそうで。読もう読もうと本を見つつ開いては閉じ、この6月にようやく読みのが現実。やっぱり本は読み終えるタイミングに意味のあるのかと痛感してます。

当時のメディア・ネット・SNSの状況でさえこれだけ様々な創り手側の意図が介在していたなんて当時の僕は全く知る由もなくここまで過ごしてきました。知らなくても過ごせるとう言うのは、取り込まれていた(いる)部分もあるということ。そうなるとAI・AR・VR・5Gにスマホなど現在のメディアの景色を眺めるとどうやら現在進行中でさらに取り込まれているんだろうなと。ここで面白いのはこの本で紹介されているのは万人が必ずしもハマるのではなく、一部の人が熱狂的に波を起こすということ。しかも設計側が思ったように進んだというのは稀であるということをこの本から学べます。これはAIがどれだけヒトに近づくかのように、ヒトへの理解がいかに困難である証左では。

研究の世界も何が当たるかなんて予測できない。要は今を生きるしか無いのですが、今をハックしようとする人・しかも悪意をもって接近してくる場合を避けるためにこのようなカラクリを知るのは有益なのではと思いました(常にアップデート必須ですが)。内幕は内の中の人しかしらないのが常として、少し遅れでもこういう情報を拾えるアンテナは張っておきたいなと。

僕のサイエンスの内幕。せっせとアウトプットとインプットに励まな今のままでは不安でしゃーない。


火曜日, 6月 27, 2023

視覚的雑味と文字的純度

 沈黙のパレードを観ました。今回の視聴の前に、原作は2回読みました。

原作のすべてを約二時間ほどの時間に詰め込むには無理があります。なので、原作の期待を持っての視聴は全体的に薄味に感じてしまいます。しかし、原作での読書体験で得られる単眼的なストーリーと違って、映像においては非常に多くの無駄・不要を含んだ多くの複眼的な情報として濃い時間として過ぎてゆきます。

原作を読んだ上で観たために文章の持つ濃密さと映像の持つ奥行きを体感しました。もし映画を先に観て本を読んだらどうなっていたのかなって。

ただ、過去いつも原作が先になるケースが多いので(でも、無理に逆を作る必要もないし)。

僕の仕事で言ううなら論文と学会等でのプレゼンテーション。7月に自分がこの状況に巻き込まれるので、今回の経験を踏まえてよい作品を世に出したいです!!

がんばれーーー!

日曜日, 6月 18, 2023

2023年 8 冊目 (377)

ためいき坂 くちぶえ坂―松鶴と弟子たちのドガチャガ 単行本
笑福亭 松枝 (著)
浪速社; 改訂版 (2011/7/1)

敬愛してやまなかった上岡龍太郎さんの訃報を目にする前日、いつものようにハードディスク内のパペポを適当に選びそれを効果音にしながら作業をしていた。その選んだ回はこの本の初版(僕が手にできたのは増版されたもの)に際し本の面白さの紹介を兼ねて鶴瓶さんが上岡さんに朗読を促したのでした。

上岡節で語られるその一節は一瞬で僕を引き込みこの本を手にして読んでみたいと思わせるほどの力を持ち、さすが上岡龍太郎と思ったのでした。

近日中に日本からこちらに発送する荷物にタイミングよく詰めれるのでそそくさとアマゾンで発注して眠りについたのでした。そしてふと目覚めたタイミング、部屋の暗さからまだまだ寝れる。そんな時はテクノロジーにアクセスせず再度眠りに向かうのですが、無意識にふとメールを開くとおかんからメールが。

「えっ!?」

僕がパペポ好きで龍太郎師匠が好きなことを知っていたので教えてくれたのでした、あなたのすきなあの語り部はもうこのにいないだと。



故人を偲びその思い出と存在をこの世に残すという大きな価値をこの本に感じました。6代目・松鶴師匠という個性とそこに集った弟子たち。一昔前の出来事でその一昔の残りで育った僕だからこの本をケタケタ笑い・しんみり感傷的になれるのかなって。今のZ世代はこの本をどう思うのかはある意味の好奇の種かなって。

そして落語の名跡を継ぐという過程の難しさ - 如何せん「松鶴」という個性と存在。それは代替の要素が無いほど各弟子に染み渡った唯一無二な関係性。それを踏まえた上での7代目襲名にかんする一部の話が綴られます。そうか、残すべき事実とは。


僕も師匠と言えるボスが二人います。「系統は同じやけど血統は違う」が最適な表現でしょうか。僕は二人の影響を受けて育ってます。だけど、引き継ぎつつ己の個性をでやっていけるか五里霧中な現実。筆者の松枝さんは僕は一番良い時期に松鶴師匠の門下に入ったのだと感じました。鶴瓶師匠はその「よい時期の最後っ屁」の最高傑作。僕も良い時期の二人のボスにオーバーラップして関われた稀有な存在。

サバイブします!ありがとう、龍太郎師匠!
あっ、これ松鶴師匠の本やった。。。すんまへん!


木曜日, 5月 04, 2023

2023年 7 冊目 (376)

すべての瞬間を生きる PLAY EVERY MOMENT 単行本(ソフトカバー)
森岡隆三 (著), 寺野典子 (その他)
徳間書店 (2022/6/9)

2002年日韓ワールドカップ。僕は昔、部活などで人の名前を覚える際にその人が履いてる靴を記憶のツールに使っていた。如何せん自分が靴好きであるからだが。当時、ラクロスに日常を注いでいた自分はもちろん靴好きだから練習・試合で履くスパイクもこだわりを持ちたかった。人と違うものを履きたい。好きな色は目立つ色、でもおしゃれに。そんな中で僕の目に留まったのはオレンジを配色するプーマのスパイク。それを履く森岡選手。日本代表でキャプテンを務める森岡選手。激戦のヤフーオークションで買いそこねた、オレンジ色のプーマのスパイク。

その後、ポートランドでサッカー(インドアやけど)をがちりプレーし、その後そのチームのマネジャーをやるにいたり、海外で活躍する日本人選手を応援し、女子のW杯をカナダに観に行き、それなりにサッカーを感じてきました。そんな中で森岡選手の名前が遡上に上がることはなかった。あの2002年のあとどのような選手生命を送ったのだろうか - なんて考えたこともなかった。

そこにふっと現れた鈴木啓太さんのYouTubeで森岡選手との対談動画。

ただただグッと来た。この人の生き方に共感を感じた。そんなに紆余曲折の人生やったんや。「六月の勝利の歌を忘れない 日本代表、真実の30日間ドキュメント」というDVDを時々見返す時の森岡選手からはこの話は今まで全く感じられなかった。でも、先日見返したら「ワールドカップの光と影」と言う森岡選手のシーンが。しかも興奮を持ってみたベルギーとのグループリーグ初戦の途中で彼が怪我をしたことなんて日本が引き分けて勝点を取ったことで完全に覚えてなかった。

この森岡選手の本を読んで感じたこと。生きた経験そのものが劇的でそこから学びたい - これがこの投稿の前のキム・フックさんの本とする。それと比較して、不器用に生きたその上手く行かなかった経験を語る中で読んだ人に語りかける - これが森岡さんの本だと思う。

同じような本はきっと世の中にあるけど、これほど丁寧に誠実に書かれた本に僕が心を惹かれました。しかも、今現在も森岡さんは現役で選手と向かっている、これまでの経験を還元するために。

サッカーをもっともっと味わい尽くしたい。

この一言にサッカーの深さ・人生の深さ・人の深さを僕は感じました。
本のタイトルでもあるPLAY EVERY MOMENT. 僕のLIFE IS A MOMENTに共鳴するフレージング、なので機会があればお話したいと心から思います。
2002年に言えなかった「感動をありがとう」を、今を生きる森岡さんに言える機会があればそれはmomentになるんかな。

えっ?オチはないっす。。。



2023年 6 冊目 (375)

「ナパーム弾の少女」五〇年の物語 単行本 
藤 えりか
講談社 (2022/6/8)

人生は近くで見ると悲劇だが、 遠くから見れば喜劇である。
チャップリンの言葉であると記憶していて、僕はこの矛盾のみえる事実を感じてきたことがあるので好きな言葉でもある。
この本は喜劇として変貌を遂げるなんて到底不可能な物語であるが奇跡と言う名の奇劇である。これがノンフィクションであることを忘れるほどの出来事である。

「ここだけが自分の場所ではない」
一歩を踏み出せれるか、一言聞けるか、リスクを取れるか。この本を手にした直後から目の前に立ちはだかるこれらの言葉たち。
友人のご子息の進路の話を聞いた時。その子にアドバイスをしながら自分が歩んできた道を振り帰った時。東京大学の入学式での祝辞を聞いた時。この次に感想を書く本のきっかけになった動画を見た時。

この本の物語の主人公 - キム・フックさん。悲劇の中でここまで希望を見出せた人がいるだろうか?トライした人はいると思うし、失敗・挫折した人もいっぱいいると思う。そこには運やタイミングなどの要素は欠かせない。でも、このキム・フックさんは動くべきところで動いて来れた。動く決断を的確にこなしてきた人。だから今がある。

僕にとっての驚きは、彼女の話はコロナ禍を経て今も地続きで継続中であること。ベトナム戦争って昔のイメージだが起きた年を考えると体験者は今も身近にいて当然だ。いかに日常が当たり前に過ぎていっているのか。想像力を働かせないといけないと思いつつ、今を的確に乗り越えていきたいと思ったのでした。

この本に出会えてよかった。Life is a moment

木曜日, 4月 06, 2023

2023年 5 冊目 (374)

あつまる細胞: 体づくりの謎 (岩波科学ライブラリー 316)
竹市 雅俊
岩波書店 (2023/1/19)

そういえばなんでそうなるねん?研究職にとって大事な発想だと僕は思います。タイトルを見たときに「言われてみれば詳細よう知らん」。ああ、恥ずかしい。

筆者の竹市先生の名前は存じ上げている。竹市先生がやっているカドヘリンというタンパク質も入りぐらいは知っている。でも、知っているだけで分かってない。ああ、恥ずかしい。

自分がまさか今のような仕事に就き、海外に住むなんて想像もしなかった。そして、多くの人がそれぞれのストーリーを持って今を生きている。その話を聞くのが基本的に大好きである。竹市先生のストーリーを知りたいな、全く知らない。

研究者の場合は退官時の最終講義や科学雑誌でインタビューなどここまで書いた3つの要件に触れることができる。でもこれらに出会うのは環境や偶然などに頼ることが多いと思う。それを書籍として読める幸せ。

そして僕がよく感じる「本は読むときがタイミング」。この「あつまる」という現象を最近ちらほら自分の仕事で垣間見る。ああ、恥をかいてよかった。

自分もこんな書籍を出版できる日が来るのだろうか。。。このページがきっかけに。。。やるやる詐欺に近くなってるがここにもっと文章を書こう!

木曜日, 2月 23, 2023

2023年 4 冊目 (373)

物語の役割 (ちくまプリマー新書)
小川 洋子 (著)
筑摩書房 (2007/2/5)

僕が人生で自分の意志で本を買って読んだ小説は小川さんの「博士の愛した数式」か東野圭吾さんの「容疑者xの献身」のどちらかです。記憶が正しければ2冊買ってどっちかから読み出した。なので同着ということで。この2冊が僕の小説の先生になります。

博士の愛した数式が生まれるまでの行程は何度か何かの対談等々で読む機会がありましたが、今回1冊の本として小川さんの物語への出会い方を知る中で最近僕が感じていた研究における発見とはと非常に似ていたので吸い込まれるように読みふけってしまいました。

発見と聞くと何か新しいものを見つける。未知の領域を開拓などといったイメージを抱くかもしれません。自然科学の世界は今も自然科学に包まれ人間が日々の営みをしている限り、発見とは人間の目を逃れて今までバレなかった存在の確認にすぎません。その存在を応用してこの世に新たな価値を提供した場合こそが真の発見、いやこれは発明になるのか。

僕の興味のある基礎研究というのは隠れていた事実を垣間見ていく作業なんではないか。それは今までバレずに存在できた者たちに物語を与え白日の下に晒す作業。僕は仲介者であって何がすごくて面白いのか、自分以外には分からないかも知れないなど思うと、いったい自分は研究費を使って何をしているのかなどと思ってしまいます。だからこそ、この1冊との出会いは僕にとって物語=目に見たものを文章化する義務への意識を新たにさせてくれました。

でも、書くのって本当に苦手。この天賦の才が欲しい。今買いてる途中の論文、あー。
物語を見つけるだけではお金にならない。この点も小説家と似ているのかな科学者は。

水曜日, 2月 01, 2023

2023年 1-3 冊目 (370-372)

なぜ、この芸人は売れ続けるのか? Kindle版
中西正男 (著) 
マキノ出版 (2022/12/9)

笑い神 M-1、その純情と狂気 (文春e-book) Kindle版
中村 計 (著) 
文藝春秋 (2022/11/28)

酔人・田辺茂一伝 (中公文庫 た 56-3) 文庫 
立川 談志 (著)
中央公論新社 (2021/10/19)

僕は芸人さんをこよなく敬愛している。喜怒哀楽の中で笑いを含む「楽」が僕は一番難易度が高いと思っていて、これをto personではなくto massしかも世代を超えた多種多様なmassにアクセスしようなど狂気の沙汰だと思うからでもある。

中西さんの本からは芸人の本懐とはを知るところになります。売れ続けるには理由がある。至極真っ当な仮説ではあるけど、時代と共に生きる芸の世界。マーケティングンが通用するなら人工的・工業的な売れる芸人がいるはずだか、そうではないからこの仮説に深みが加わるのではないだろうか。そう、要は人間なんだと。その人間性も幅広く真似できそうな一丁目一番地的な要素から、滲み出なければ生まれない味の部分まで。そう、世に出るとはのてにおははまずはこのようなレジェンドから学びましょう。

で、夜に出るためのシステムとそのための狂気は中村さんの本から学べます。そうM-1グランプリです。僕はM-1ど真ん中で大学1回生のときに第一回が始まりクリスマスの夜に画面にかじりついて中川家の優勝を観てました。MC赤坂さんの「石川家・アメリカンロック」は伝説です。大学3回生あたりからbaseよしもとに笑い飯・千鳥の大喜利ライブやスーパー千鳥パーティーを観に足繁く通う頃にはこの本で描かれる笑い飯マインド全開です。今も懇意にしてくれている当時よく飲みに行った後輩には「厳しい笑いを教えられました」と大学卒業時に言われたのを遠い目で思い出します。でも、それぐらいとんねるず・ダウンタウン・ウッチャンナンチャンに関わるような人たちが感じていたようなピリピリ・ヒリヒリするような緊張感がM-1によって生まれたのです。それを素人の僕も真に受け「おもろなりたい」にガチンコで体当りしてました。その当時の空気感まるまるを文章にしてくれたのがこの本です。紙で手を切るような感じでスーッと自分の当時の異常さにメスを入れらてた気がしました。ただ言えること、その時のガチンコを僕は後悔していなくて寧ろ今思えばよかったと自分自身には還元できます。ただ当時に巻き沿いにあった後輩には今度話を聞きながら場合によっては謝らなって思います。それぐらいM-1と笑い飯と漫才は一部の人に革命を起こしたのでした。そうあれは夢でなかったと、この本のお陰で。

立川談志。師匠。もう三途の川を越えて時間が立ちますが、師匠のおしゃべりを知ってる人ならこの本は読んでる途中から談志節が脳内で師匠の声で聞こえてきます。師匠のパトロンであった田辺大師匠のお噺。時代の空気もありますが、なんだろうなんだか憧れる世界です。それはNHKプロフェッショナルでYOSHIKIさん・ビートたけしさん・山中伸弥さんが会話する状況のように。文化交流。ある意味で取っ組み合い。でも探り合いの情報収集。これが芸の肥やし!科学者は何を肥やしにするねん!こんな丁々発止のやり取りがあればその場は脳を刺激する場所でしょう。今はNSCのように芸を目指す人のパイが増え、お酒離れが謳われ、コロナで、学者も雑用に追われ。この本は牧歌的なのか?いや違う。談志師匠にとっての田辺大師匠ような関係性を持てる事ができるか。大師匠のように寛容性を持てるか、師匠のように度厚かましくニコニコできるか。要は人間関係。

そう人が作る世界それが芸能界、最近は芸が西洋じみてカタカナになったり!?
慣れない粋をかますとこのように滑ります。
3冊から学んだのは。自己・環境・関係性。そう、どこの一般社会でもある現実。ただ芸の世界はよに晒され循環が早い残酷なレース。今を生きるなんです。Life is a moment! だからみんなそんな世界を塀の外から傍観者として娯楽として観たいんです。そこに需要がある。

あーーー、そんな僕は何を求めているのか。ようわからんけど、僕の主成分を再確認するような三冊に出会えました。あっ、あけましておめでとうございます!今年もよろしゅうに!
2月1日ですが、ええやん!な!?