木曜日, 2月 23, 2023

2023年 4 冊目 (373)

物語の役割 (ちくまプリマー新書)
小川 洋子 (著)
筑摩書房 (2007/2/5)

僕が人生で自分の意志で本を買って読んだ小説は小川さんの「博士の愛した数式」か東野圭吾さんの「容疑者xの献身」のどちらかです。記憶が正しければ2冊買ってどっちかから読み出した。なので同着ということで。この2冊が僕の小説の先生になります。

博士の愛した数式が生まれるまでの行程は何度か何かの対談等々で読む機会がありましたが、今回1冊の本として小川さんの物語への出会い方を知る中で最近僕が感じていた研究における発見とはと非常に似ていたので吸い込まれるように読みふけってしまいました。

発見と聞くと何か新しいものを見つける。未知の領域を開拓などといったイメージを抱くかもしれません。自然科学の世界は今も自然科学に包まれ人間が日々の営みをしている限り、発見とは人間の目を逃れて今までバレなかった存在の確認にすぎません。その存在を応用してこの世に新たな価値を提供した場合こそが真の発見、いやこれは発明になるのか。

僕の興味のある基礎研究というのは隠れていた事実を垣間見ていく作業なんではないか。それは今までバレずに存在できた者たちに物語を与え白日の下に晒す作業。僕は仲介者であって何がすごくて面白いのか、自分以外には分からないかも知れないなど思うと、いったい自分は研究費を使って何をしているのかなどと思ってしまいます。だからこそ、この1冊との出会いは僕にとって物語=目に見たものを文章化する義務への意識を新たにさせてくれました。

でも、書くのって本当に苦手。この天賦の才が欲しい。今買いてる途中の論文、あー。
物語を見つけるだけではお金にならない。この点も小説家と似ているのかな科学者は。

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