金曜日, 8月 08, 2014

読んだ本・その30(173)

博士の愛した数式 (新潮文庫) [文庫]
小川 洋子 (著)
新潮社 (2005/11/26)

単行本を手にしたのはこんなにも前だったのかと出版された日付をみて感慨深くなりました。正確な日付はわかりませんが05年から06年の間に日本に一時帰国した際に手に取ったことは確か。

ラジオ番組の好きなパーソナリティーがお勧めだと。そして人生で始めて自分の金で読みたいと思って買ったこの小説。当時も読中・読後ずっとこのタッチの文章に触れていたいと思ったのは鮮明に記憶しています。

あるひょんなきっかけを経て、もう一度読みたいと文庫を購入。当時抱いたのと同じ感想はもちろんですがそれ以上に深く深く心と脳にずっしりと横たわる喜びや幸せという類の感情。
それは博士の語る数学と数の美しさに対して素直な感動と尊敬を持てるようになった現在の自分。

ライフサイエンスを仕事にしてる以上、いつも感じる生命の奥深さや複雑さ時に見せる乱雑さ。知恵と知識を組み合わせ小さな脳から仮説を立て答えを求める作業。それは現象として僕の前に立ち尽くす。その現象を定義という段階で物理学や数学が顔を出す。その数という存在。無限や普遍という性格を持つ彼らは神なのかそれと点なのか空なのか。

約10年前に手にした時には思いもよらなかった新たな世界に少しの驚きとそれを教えてくれる博士への敬意。アカウンタビリティの必要性が謳われる昨今の科学で、こんなに数字だけで人を魅了することが出来るという衝撃。もっともっと探究心もって今ある目の前の問いに挑まねばと思ったのでした。

さらに10年後この本を手に僕は何を想うのだろうか。。。

2 件のコメント:

June さんのコメント...

私もこの本を読ませて頂きました。この小説内の日常的な風景が鮮やかに切り取られて、それがまるで愛おしく思える瞬間瞬間にドキドキしながら読みました。私は完全に彼女の立場で読みましたが、博士を想う心が日常の風景と共に繰り広げられる様は、自分のそれと重ね合わせてとても嬉しく、そして時に切なくもなりました。私も10年後に再び読んでみたいと思います。

Yoshi さんのコメント...

>Juneさん
コメントありがとうございます。
感情移入の対象がそれぞれ異なったりするのが小説の醍醐味でしょうか。
それをその世界にいるように居るように語り合えることが文学のすばらしさなのかもしれませんね。
10年後にまたここで会いましょう。