日曜日, 2月 16, 2014

読んだ本・その9(152)

母性 [単行本]
湊 かなえ (著)
新潮社 (2012/10/31)

友人から借りた一冊です。僕は基本のノンフィクションを読むことが多いので、久しぶりに読んだ文芸作品でした。

母と子の2つの手記の交互の描写により出来事を現在まで辿っていきます。
相手はこう感じたのではないか、相手はこう思っているのではないか。相手に対する気持ちと自身の持っている感情。
それによる両者の間にある大小様々な溝。この溝からの歪。そして崩壊。

当事者性という言葉が震災後語られました。被災地の方を想うこと。
両親・友人・恋人・同僚に至るまで当事者はいたるところに居るのです。

僕が感じたこと、僕が推測したこと。沢山の人との出来事の中で、あれはあれで実際に良かったのか?
読みながらたくさんの人達の顔が浮かびました。そして、その方々との思い出を回想していました。
そして、こういった溝を埋める方法は一体何なのか。読む機会を持ててよかったです。

そして、今は幸いこの作品の中で描かれるような不幸をまともには体験したことのない自分がいますが、いつ・どこで・ほんの小さなきっかけで、目の前が真っ暗になるような心が崩壊しそうな出来事に遭遇するかもしれないということ。それは本当に紙一重であること。
2012年の末にここに記した「名前のない女たち」を読んだ時に感じた感情に似たモノが胸の中に蠢きました。
前回のが日常の出来事に関して思ったのに対し、今回のは身近な強い繋がりから一瞬の刹那な出会いも含めて対象が人であり感情であること。
流れるような毎日の中で忘れがちなものに気付かされました。

時々立ち止まる機会は大事ですね。飲みながらでも。

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