火曜日, 12月 23, 2014

読んだ本・その43(186)

近大マグロの奇跡: 完全養殖成功への32年 (新潮文庫) 文庫 – 2013/11/28
林 宏樹 (著)
新潮社 (2013/11/28)

ドキュメンタリー。プロジェクトXやカンブリア宮殿的とでも言ってしまえば安い安い話になります。
でも現実に生物学をやる立場として感動しました。そして羨望をもってこの本を読後眺めました

書内に出てくるフレーズ。この成功は「私学」だから、「私学」が主導したから、といった下り。理念や予算とかこの数年の基礎研究の大きな議論にダーツの矢を投げたような。これが示す意味は重いですね。

アウトプットとしてはマグロをおいしく食べれると言った食文化ワイワイと言った話ではなく、食糧安全保障の話であるという事。資源枯渇や国際ルールに伴う規制。その中で安全に安定的に海産資源を確保するか。農業や畜産といった技術との対比なるかもしれません。なぜ魚なのか?立ち止まって考えるのにとてもいい機会を与えてくれるでしょう。

そして、GMO(gene modified organism: 遺伝子組み換え)に関しても考える事象も出てきます。完全養殖魚を海に放つこと。人工交雑によって2つの種のいいところ備えた種の生産(これは米の栽培にでも応用されている技術)。さらに選抜育種と言う手法(同じ個体種内でのセレクション)。これらは人為的(人工交雑や選抜育種は最終的に個体自身の生殖活動によって増える)な分子生物学ではなく経験則的な側面があって、これらによって過去僕たち人間も多様性を獲得してきた事実でもあります。
それと相対する遺伝子組み換え。遺伝子の交換と言った側面は両者に共通する事項である。その事実を踏まえてどこまでの人が厳密な“遺伝子組み換え”に対しての嫌悪感をあらにしているのか。

GMOの花粉の伝播やそれを食す昆虫類と言った問題から言えば、管理出来る範囲とその範囲外と言う意味では農業の方が圧倒的に不利でしょう。でも「分子生物学的」な組み換えと「ある側面で自然発生的に起こりうるものを「人工・人為的」に自然交配に任せて行った」組み換え(はい、説明が長いのは知ってる!)の時の問題のレベルはどうなの??

きっと大きな議論は起きていて僕自身完全にフォローできていない確証はあります。でもそれすら混同してしまっている方たちには、考えるきっかけを与える良書としか僕にはおもえません。
米・肉・魚そして野菜。もう一度何をもって天然・安全と言ったことを考えてみませんか?

この本もまた帰国時に訪れたい場所を与えてくれました。いつか、僕のサイエンスも人に感動を与える機会がやってこればと思います。
知ってます。それを意識てるようじゃ一生無理なのも。。。
知らぬが仏。ちょっと違うか!?。。。

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