土曜日, 9月 28, 2013

本の感想2013 No32-33(その132-33)

日本の路地を旅する [単行本]
上原 善広
文藝春秋 (2009/12/15)

アマゾンの内容紹介より
かつて中上健次が「路地」と呼んだ被差別部落。その出身者である著者が、日本全国に存在する路地を旅する異色のノンフィクション。

今の若い世代はそんなに意識がないといわれている部落問題・同和問題。僕が小学校の時はこれに関する教育を道徳の時間に受けた気がします。
街の雰囲気やその集落の人たちがどういった職に着いているのかなど、歴史的なものから現在の状況を筆者が足で取材して記した本で、とても興味深く読みました。

感じたこと2つ

1つ目。僕が研究材料として使っているコラーゲン。売ってるものとか、大量に使いたい場合など牛や豚の皮から精製するのが結構スタンダードでしょう。
動物を殺さないといけない。その動物を殺める仕事。そして、僕らのように研究に使わない場合。それは皮製品に加工する。加工品に至るまでの最初の処理(毛を抜いたりなど)。これらの汚れ仕事を当時、この集落の人がしていました。そしていまもその名残はあるようです。
当たり前に使っているもの。カバンとか靴とか。それにはかの人作業があって成り立つもので。使う僕たちもいってみればその一部になっていることを忘れてはいけないなと。
菜食主義といたってもこれらの革製品を使うこと。リサイクルだエコだとか言っても捨てたごみの行き先がどうなってるのとか。研究で動物を殺めますが、研究とか医学の発見とか言葉いいけどやってることは同じだなって。
自分たちの思ってること見えてることってわずかで、いろんな接点があって世界は広がってるなぁと想いを馳せました。

2つ目。差別はいけないと言うのは当たり前だけど、人間の内面には大なり小なり差別意識ってあると思う。この差別意識は嫉妬や対抗心だったり人の感情感覚から醸成されるものだし、それを表にする人・しない人、意識する人・しない人。
昔の差別対象だったこの部落問題。現代世代では意識されないけど、現代の中には違う事に対してある種の差別感情があったりするのかなって。それは国や地域によってもちがうだろうし。グローバルな目で見たら人種だったりもするだろうし。千差万別の価値観と多様性をみとめる人類がある以上、これはヒトが一生抱える問題なのかなーなーんて思ったりしました。差別と区別。ここの境界も難しいだろうしね。

色々と深く考えた本でした。


体験者が伝える実験動物施設の震災対策―東日本大震災の教訓を活かせ!! [単行本]
笠井 憲雪 (著), 片平 清昭 (著), 池田 卓也 (著), 高木 一明 (著), 歯黒 重樹 (著), 安藤 隆一郎 (著) 
アドスリー (2011/11)

なかなかいい値段なのですが、自分が将来直面しないとは限らない問題なので手元においておきたくて購入。
早い話が、地震で研究で使う動物を飼ってる建物がどんなことになって、どうやって立ち直ったかという体験談です。
これだけ職業モラルを高くもって、かつあのような惨状で動物の為に責任を持って働く。違う国で同じこと出来るのか。。。と正直感銘しました。

ここでの主人公は博士とか白衣を着て研究をしている人たちではありません。この人たちはその施設で飼ってある動物を使う人たち。主役はその施設で働く人たち(もちろんその人たちも博士や修士・獣医といったひとはいますが、こういったものは僕に言わせれば単なる肩書き。やっている仕事が大事なのです)です。
自分は使う側の人間ですが、やぱり何かあったときの責任はそれを購入した僕たちにあるべきで。管理をお願いしている方たちに丸投げはダメでしょう。これが僕のスタンスですが実際の現場でそれを突き通せるか。これを読んでそうあるべきだと強く痛感しました。こんなにも動物を愛し大事にする人たちのおかげで今の研究が成り立っているのだから。

あと阪神淡路から色々な地震対策があって今回この程度(といっても大変な被害ですが)で収まったのだなと。過去を顧みて、何かを学び応用する。失敗や反省を生かす(まぁ、まず反省することと失敗したことに気づくことが前提ですが。。。)。研究者として人間として、どんな時でもこの姿勢は忘れたくないですね。

色々考えさせられました!

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