木曜日, 12月 09, 2010

接点

僕はある病気に関連したタンパク質の研究をしています。
リサーチセンターのある病院にはいろいろな方が働いています。
いつもフロアをキレイにしてくれている掃除のおばちゃんがいます。
彼女はとても親切でいつも仲良く話をしてくれます。
いろいろな話をしますが細かい仕事の話をすることはまずありません。内容を言うこともなければ訊くこともない。でもお互いの共通認識として「タンパクを扱ってなんや研究をしていることは知っている」。

今日、僕がその病気に関する論文をまとめているフォルダーを整理していたら時のこと。
彼女がそのフォルダーに反応しました。Osteogenesis imperfecta(日本名は骨形成不全症)とい病気で僕たちは略してOIといいます。
「OIやってるの?」と言う彼女。彼女は冗談が好きなので、何か面白いフレーズを略しOIと言っているのかと思って、何を言うのか期待していました。
次の一言「Osteogenesis imperfectaやろ!?」
僕は「えっ!?知ってるの!?」って言ってしまいました。
彼女の知り合いに不幸にもその病気に罹っている方が居るとの事でした。

それを研究している当事者。それを身近で体験している当事者。
お互いそれを同じ時間を共有しているにも関わらず、専門性と言う名の壁によって知ることが無かった。
何をあなたはしているのですか?簡単な質問だけど実はどこまで話すかって難しい。
研究者は一般人にも分かるようにと思う。一般人は研究者の話をどう聞いているのだろう。僕にとってはとても刺激的な出来事でした。

そして色々なことを話しました。僕はあくまでも研究という「知」の部分を。彼女は経験と言う「身」の部分を。
そしてお互いの考え方、感じ方、アプローチ、認識、問題点など有益なディスカッションをしました。知ってるからこその倫理や差別といった考え。一般的な考えから出る疑問や対処法。その落としどころ。
改めて研究者がやるべき説明責任(accountability)の重要性を感じました。
僕は機会があればその知り合いの方にに会わせて欲しいと言いました。
それは研究者としての説明責任と、実際に取り組むべき課題との間をこの目で確認し埋めるために必要なプロセスだと思ったから。
実際に会えるか分からないけど、現実としての「病気」を感じた上で現場としての「研究」に落とすことが出来るのか。言葉がよくないけどなんか楽しみです。

ひょんな出来事。そこに生じた接点。
この空間の中で僕はどれだけの情報をシェアし有益に使えているのだろう。
日常の中で起こる小さく見えそうな行動とそれをするタイミング。
これは記しておくべきと布団に入ってから感じて起きた、小さな行動でした。

うーーん、生きるそして感じるというのは大変やけどおもしろい!

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